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19世紀の歴史的ギター教則本 ソル、アグアド、ジュリアーニ

2014/04/16
19世紀のギター界で活躍し、現在に至るまでもその曲を通して世界的に著名な音楽家3人のギターメソッドを一挙ご紹介いたします。モダンギター界に於いても彼らのメソッド、また作品が非常に重要な位置を占めているのは誰しもが認めるところです
これらの教本に使われている楽譜は、演奏速度、演奏弦の指定、運指を含めて、ごくわずかな例外的な追加を除いて原典のままで、著者の息遣いが直接伝わってきます。 これら全ての教則本の出版元はギター音楽界の碩学、英国のBrian Jeffery 教授によるTecla Editionsから、すべて英語版での出版となっています

Fernando Sor
Method for the Spanish Guitar
A4+版、本文100ページ並びに解説。英語版

Sor Metodo.JPG1830年に、当時パリに住んでいた著者によりフランス語で出版され、すでにその2年後には英語に翻訳され、ロンドンの有名なOxford Circusのそば、Princes Street 20番地にあったR. Cocks & Co.によって出版されたものである。
因みに、オリジナルのフランス語版のタイトルにはスペインと言う単語は入っておらず、単に"ギターのメソッド"となっている
一般的に最初の数ページの基本的な知識の説明の後は、技術解説をしつつ添付楽譜の難度を高めていくといった形の教則本の多い中、このSorのメソッドは前半半分以上に渡って図解入りの丁寧な説明に費やされており、その説明の中での具体例として後半に楽譜が載っているという体裁をとっている
彼の時代のギターはロマンティックギター、所謂19世紀ギターであり、左手親指の使い方も現代のアコースティックギター(フォークギター)で時として行われるように指板の裏側から上に出すのが一般的であったものを、彼は自分の経験から現代式の使い方を提案し、また良く知られたように、解説の図版からも右手の爪は短く切り揃えられ、弾弦の位置、方向に関しても詳しく述べられている。右手は原則親指、人差し指、中指の3本を使う、、、等、彼の考え方を知り、彼の有名な練習曲「月光」の演奏にも大いに参考となる指針であろう
説明は細部にわたり、非常に具体的なもので、まるで"ソル先生"から直接話を聞いているような印象さえ受ける
Sorの曲をその時代の考え方の下で演奏を、と考える方にはどうしても一読をお勧めしたい教則本である


Mauro Giuliani
The complete Studies for guitar
A4+版、本文173ページ並びに解説。英語版

Giuliani.JPGフェルナンド ソルとほぼ同時期のイタリア生まれのギタリスト、作曲家であるジュリアーニは、その音楽キャリアに於いてはチェロに携わった期間もあるが、ギターは独学であった
"ギター完全学習書"と題したこのTecla社からのジュリアーニ教則本は、ジュリアーニの教本の中核となる作品1の"ギターのエチュード"の他に、作品48 "練習"、作品51 "18の漸進的レッスン"、作品98 "楽しいエチュード"、作品100 "練習曲集"と作品139 "第一ステップ"の6つの部分からなる。オリジナルの"ギターのエチュード"は彼の母語イタリア語のほかに、彼の活躍したウィーンのドイツ語、並びにフランス語で書かれている
チェロはオーケストラで演奏する腕前を持つものの、独学でギターを学んだ彼は、「一人で考えて苦難の後に身に付けた秘訣を後に残したい」という思いからこの"ギターの学習"を書いている。彼の教則本はソルのものとは全く異なり、ほとんど文章の説明は無く、漸進的な練習曲集と言った趣で、基本的にはある基礎的な知識を持った演奏者が、先生の指導なしに、それ以上に技術の進歩を望む時のためのものと、前書きで述べている。例外的につけてある説明文も、ほとんどが一、二行のごく凝縮されたものである。彼のこの"ギターのエチュード"自体は、1)右手の練習、アルペジオ 2)左手のための一般的な調性の練習 3)ギター音楽のための装飾効果 4)12の漸進的レッスン の四つのパートからなっており、第三章までの楽譜に丁寧につけてある左右の手の指使いも、何も追加も削除もしていないジュリアーニのオリジナルの教則本のままであり、それだけに、彼が運指をつけるときに何を意図していたかということが直接的に伝わってくる。一方、第四章は全く運指が付けられておらず、どういう運指にするかは、学習者のそれまでに得た知見の結果に委ねられている
"練習"以下の作品も、練習曲、とひとまとめにしてしまうことはできない、非常に中身の濃い曲からなっている曲集である

Dionisio Aguado
New Guitar Method
A4+版、本文179ページ並びに解説。英語版

Aguado.JPGディオニシオ アグアドはフェルナンド ソルとの親交でも有名な、当時を代表するもうひとりのスペイン人ギタリストである。この教則本の初版オリジナルはスペイン語で書かれ、マドリードで発行されている。ここでご紹介するのは前述の通り、Tecla Editionsからの英語版である
今回紹介する3冊の教則本の中では一番新しく、先人の経験を踏まえた結果のためか、現在我々の良く目にするギター教則本と良く似た体裁を持っている。解説部分のまとまったソルの教則本と、ほとんどが楽譜で出来たジュリアーニの教本との中間を行く、解説とともに、その練習のための楽譜が同時に提示された形の教則本となっている。Andres Segovia が、弟子たちに薦めたギター教則本もこのAguadoのものであった
彼の研究成果の一部でしかないが、良く知られたものに、ギターを保持するための三脚の考案がある。考え方のもとは、いわゆる、我々の常識とする通常のギターの構え方では楽器の振動を抑えてしまい音に悪影響を与える不都合を防ぐ、というものであったが、彼がこの三脚を使ってギターを構えている絵を詳しく見てみると、ギターのサイズが現在のものよりも小ぶりであることに気づく。これはTorres以前の当時の楽器、ロマンティックギターがモダンギターよりも小ぶりであったからで、当時は現在のフォークギターのようにベルトを肩に掛ける演奏方法が一般的であったようだが、仮にこの楽器を脚台で高くした左足のひざの上に乗せるというモダンギターと同様な構え方をすると、いささか身体をひねらなければならず、長時間の演奏がきつかったという要素もあることと思われる
冒頭の十数ページは全くの初心者に向けた詳しいギターの解説となっており、その後の楽譜の付随した説明部分の解説も短いセンテンスでまとめられ、非常に分かりやすく書かれている

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楽器は在庫があれば全て試奏可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。

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