過去スレ:弦溝の幅・深さの最適化による新品のガット弦のブレーク・イン・タイムの短縮化について

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過去スレ:弦溝の幅・深さの最適化による新品のガット弦のブレーク・イン・タイムの短縮化について

投稿記事by nomura » 2013年10月03日(木) 1:37 am

0 弦溝の幅・深さの最適化による新品のガット弦のブレーク・イン・タイムの短縮化について
モグラ

 上駒や駒における弦溝の幅・深さと張る弦の太さ(ゲージ)がマッチしているかどうかは、新品弦を張ったときのブレーク・イン・タイム(弦の伸びが収まってピッチが安定するまでの時間)と大いに相関関係があります。
 上駒や駒における弦溝の幅・深さを、張る弦の太さ(ゲージ)に合わせる(最適化する)ことによって、新品弦を張ったときのブレーク・イン・タイムの短縮化が可能となります。
 このたび、工房で弦溝の幅や深さを調整してもらい、ブレーク・イン・タイムが明らかに短くなりましたので、その具体的な例(データ)を提供いたします。

楽器:ヴァイオリン(バロックヴァイオリンではなく、モダンヴァイオリン)
弦:TOROのヴェニス・カトリン 3×V(A・D・G線は、全て金属の巻き線の無いプレーンガット弦)、E線のみオイドクサのアルミ巻きスチール)、ゲージ:A:0.74ミリ、D:1.06ミリ、G:1.52ミリ

●弦溝の幅や深さ
【調整前】
 以前オリーヴの標準ゲージを張っていたため、上駒と駒の溝の幅や深さは、オリーヴの標準ゲージにとって最適な状態となっていた。このため、現在張っているTOROのヴェニス・カトリンにとっては、A線で約10%、D線で約20%、G線で約40%、弦溝の幅や深さが不足している。

【調整後】
 A線、D線の弦溝の幅や深さについては、現在張っているゲージに最適な状態になるように工房で調整してもらった。つまり、上記の約10%、約20%のギャップをほぼ解消してもらった。G線については、今後もう少し細いゲージに移行する予定であることから、約40%のギャップを全て解消せずに、その半分程度(約20%程度)を解消してもらった。

■ブレーク・イン・タイム
【調整前】
 弦の伸びが収まってピッチが「ほぼ(=練習中にストレスを感じない程度に)」安定するのに、A線とD線は約3日、G線は約4.5日かかっていた。
弦の伸びが収まってピッチが「完全に(=公開演奏で全く支障が無い程度に)」安定するのに、A線とD線は約4日、G線は約5.5日かかっていた。

【調整後】
 弦の伸びが収まってピッチが「ほぼ(=練習中にストレスを感じない程度に)」安定するのに、A線とD線は約2日、G線は約3日かかった。
弦の伸びが収まってピッチが「完全に(=公開演奏で全く支障が無い程度に)」安定するのに、A線とD線は約3日、G線は約4日かかった。

★まとめ
 弦溝の調整後は、ブレーク・イン・タイムは、各弦それぞれ短縮している。G線は、従来は弦のゲージと弦溝とのギャップが大きかったこともあり、A・D線が1日短縮したのに対して、G線は1.5日短縮している。G線は、まだ20%程度のギャップが残っているが、これを解消すれば、ブレーク・イン・タイムはA・D線と同等レベルまで短縮されると思われる。

 自分は、練習時間が少ないので、上記のような日数がかかっていますが、練習時間の多い方であれば、さらに1日短縮できると思います。
参考までに、自分が、オリーヴの標準ゲージを張っていたときは、
・弦の伸びが収まってピッチが「ほぼ(=練習中にストレスを感じない程度に)」安定するのに、A線・D線・G線は約4日かかっていた。
・弦の伸びが収まってピッチが「完全に(=公開演奏で全く支障が無い程度に)」安定するのに、A線・D線・G線は約7日かかっていた。
 という状況でした。

 自分のヴァイオリンにとってのヴェニス・カトリンのベストゲージが確定したら、再度工房に行って、弦溝の幅と深さを、さらに最適な状態に調整してもらう予定です。また、その際に、弦溝の滑りが良くなるように(摩擦が小さくなるように)弦溝をコンパウンド等でピカピカに磨き上げてもらう予定です。
 職人さんによると、弦溝の最終調整後には、現状よりも半日〜1日程度、ブレーク・イン・タイムが短縮化されるだろうとのことでした。
 弦の伸びが収まってピッチが「完全に(=公開演奏で全く支障が無い程度に)」安定するのに、練習量が少ない人でも「2日間」しかかからない、となると、最新のナイロン(シンセティック)弦よりも、ブレーク・イン・タイムが短いと言っても良いのではないでしょうか。
 プレーンガット弦は、弦を張り替えた後ピッチが安定するまでに時間がかかる(ブレーク・イン・タイムが長い)、ということで敬遠している方がいらっしゃるかと思いますが、弦溝を弦きちんと調整すれば、練習量の少ない人でも、「わずか2〜3日で」本番で使えるくらいピッチが安定する、ということを知っておいて損はないと思います。
 それでは、ごきげんよう。

2009/10/18 21:20


1 副次的効果について
モグラ

先ほど、弦溝の幅・深さを最適化すると新品弦のブレーク・イン・タイムが短縮化されるというお話をしましたが、次のような副次的効果もあります。

・調弦時により微細に音程を調整できる。⇒調弦がし易くなり調弦時間が短縮される。
・調弦が狂いにくくなる。⇒調弦の回数が減るので練習(演奏)に集中できる
・弦が傷みにくくなる。⇒弦の寿命が長くなる。
※表面がニスコーティングされているプレーンガット弦の場合、コーティングが痛みにくくなることは、耐湿性の維持に効果があるので、ピッチの安定性の維持に貢献します。

 こうした効果が組み合わさることにより、プレーンガット弦でも(たとえ激しく弾いても、あるいは、気温や湿度が急激に大きく変化しても)調弦が狂いにくくなり、音程が安定します。
 プレーンガット弦を張っている方で、ピッチが狂い易い場合は、弦溝の幅・深さがその弦の太さ(ゲージ)にとって最適であるかどうか工房でチェックしてもらい、調整してもらうと良いと思います。
 弦溝がきちんと調整されていれば、ニスコーティングされたプレーンガット弦は、ピッチの安定性や耐久性が十分過ぎるくらい確保されます。
 それでは、ごきげんよう。

2009/10/19 00:26
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登録日時: 2013年9月23日(月) 11:26 pm

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